パラリンピックで車いすを使うスポーツには、どのような種類があるのでしょうか。
車いすバスケットボールや車いすラグビーのように、競技名そのものに「車いす」が入る競技もあれば、パラ陸上やパラ卓球のように、競技の一部に車いすクラスが設けられている競技もあります。
そのため、パラリンピックの車いす競技は、何を含めるかによって数え方が変わります。
この記事では、夏季パラリンピックで車いすを使用する主な競技を一覧にし、競技の特徴や競技用車いすの違いを分かりやすく紹介します。
各競技の詳しいルールやクラス分けについては、関連する子記事へ分けて案内します。
パラリンピック全体の意味や競技の成り立ちについては、パラリンピックの「パラ」の意味と競技の基本で解説しています。
パラリンピックの車いす競技一覧
夏季パラリンピックで車いすを使用する主な競技を、車いすの使われ方で整理すると次のようになります。
| 競技名 | 車いすの使われ方 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 車いすバスケットボール | 競技専用車いすを使用 | スピードや旋回、チーム戦術が見どころ |
| 車いすラグビー | 競技専用車いすを使用 | 車いす同士の接触を生かしたチーム競技 |
| 車いすテニス | 競技専用車いすを使用 | 2バウンドまでの返球が認められる |
| パラフェンシング | 車いすを固定フレームに設置 | 前後移動をせず上半身で攻防する |
| ボッチャ | 車いすに座って競技 | ボールを目標球へ近づける戦略競技 |
| パラ卓球 | 車いすクラスと立位クラスがある | 車いすクラスは1~5 |
| パラアーチェリー | 車いす・スツール・立位などがある | 選手のクラスに応じた姿勢で射る |
| パラ陸上 | 車いすレースや投てき種目がある | レーサーや投てき用フレームを使用 |
| パラバドミントン | 車いすクラスと立位クラスがある | WH1・WH2が車いすクラス |
車いす競技の数え方
競技名に「車いす」が入る競技だけを数える場合
競技参加者が車いすを使用する競技を含める場合
競技内に車いすクラスがある種目まで含める場合
このどこまでを対象にするかによって、競技数は変わります。
この記事では、車いすバスケットボールなどの専用競技だけでなく、車いすクラスがある競技も含めて紹介します。
「車いす競技」は数え方によって種類が変わる
パラリンピックの競技名だけを見ると、「Wheelchair」の名称が付く競技は限られています。
一方、パラ卓球、パラ陸上、パラバドミントンなどにも車いすを使用する選手のクラスがあります。
また、ボッチャではパラリンピックに出場する選手が車いすに座って競技しますが、地域の体験会やレクリエーションでは、障害の有無にかかわらず椅子や床に座って楽しむこともあります。
パラリンピックの国際競技と、地域で誰でも楽しめるレクリエーションでは、参加条件や用具の扱いが異なります。この記事では、パラリンピック競技としての分類を中心に紹介します。
競技名に「車いす」が入る競技
車いすバスケットボール
車いすバスケットボールは、1チーム5人で得点を競うチームスポーツです。
コートの大きさやゴールの高さは一般のバスケットボールと同じですが、車いすの操作に合わせた独自のルールがあります。
ボールを持った選手は、車いすを連続して3回以上こぐ前に、ドリブルまたはパスをしなければなりません。
選手には身体機能に応じて1.0~4.5点の持ち点が割り当てられ、コート上の5人の合計は14点以内にします。
バスケットボール用車いすの特徴
バスケットボール用車いすは、素早く方向転換しやすいよう、左右の大きな車輪が外側へ傾いています。
前方には接触時に足元を保護するバンパーがあり、後方には転倒を防ぐための小さなキャスターが付いています。
車輪の数やフレームの形は、選手の身体機能やポジション、使用する車いすによって異なります。
車いすラグビー
車いすラグビーは、1チーム4人でボールを運び、相手側のゴールラインを通過して得点する競技です。
車いす同士の接触が戦術の重要な要素ですが、相手選手の身体への接触や危険な接触は反則になります。
選手には0.5~3.5点の持ち点があり、通常はコート上の4人の合計を8点以内にします。
女子選手が出場する場合の追加枠は、選手の持ち点によって異なるため、一律に「女子選手1人につき0.5点」とは限りません。
ラグビー用車いすの特徴
車いすラグビーでは、選手の役割に応じて形の異なる車いすが使用されます。
主に得点を狙う選手が使う車いすは、相手の守備に引っかかりにくい丸みのある形状です。
相手の動きを止める役割の選手が使う車いすには、前方へ突き出したバンパーが付いています。
車いすラグビーの詳しいルールは、車いすラグビーのルールと専用車いすの特徴で解説しています。
車いすテニス
車いすテニスは、一般のテニスと同じ大きさのコート、ネット、ボール、ラケットを使用します。
大きな違いは、ボールが地面に2回バウンドするまでに返球すればよいことです。2バウンド目は、コートの外側に落ちても認められます。
競技規則では車いすも選手の身体の一部として扱われるため、ボールが車いすに当たった場合は失点になります。
クラスは、下肢に障害のある選手が出場するオープンクラスと、上肢にも障害がある選手が出場するクァードクラスに分かれます。
テニス用車いすの特徴
テニス用車いすは、左右へ素早く旋回できるよう、大きな車輪が外側へ傾けられています。
後方には、サーブや返球時に身体を反らせても後ろへ倒れにくくするための転倒防止キャスターが付いています。
キャンバー角やキャスターの数などは車いすによって異なるため、すべてのテニス用車いすが同じ構造とは限りません。
競技全体で車いすを使用する競技
ボッチャ
ボッチャは、白い目標球であるジャックボールに、赤または青のボールをどれだけ近づけられるかを競うスポーツです。
パラリンピックでは、BC1からBC4までのクラスに分かれ、選手は車いすに座って競技します。
手で投げる選手のほか、足を使って蹴る選手や、ランプと呼ばれる勾配具を使ってボールを転がす選手もいます。
ランプを使用する選手には競技アシスタントが付きますが、ボールをどこへ動かすか、どの方向へ転がすかは選手自身が指示します。
ボッチャで使う車いすと用具
ボッチャでは、競技中に激しく移動するためではなく、安定した姿勢で正確に投球するために車いすが使われます。
選手によって、日常生活用車いすや電動車いすなど、使用する車いすは異なります。
国際大会で使用するボールには重さや周長などの規格があり、World Bocciaの公認大会では、ライセンスを受けたメーカーのボールを使用します。
一般の体験会では自作ボールや代用品を使う場合もありますが、パラリンピックなどの公式競技と同じ用具規定ではありません。
ボッチャの基本ルールや楽しみ方は、ボッチャのルールを分かりやすく解説した記事で紹介しています。
パラフェンシング
パラフェンシングは、車いすを専用の固定フレームに設置して行う競技です。
車いすを前後へ動かせない状態で向かい合うため、素早い剣の動きや上半身を使った駆け引きが見どころになります。
種目はフルーレ、エペ、サーブルがあり、選手は身体機能に応じてカテゴリーAまたはカテゴリーBに分かれます。
競技で使う車いすと固定フレーム
競技では、選手同士の距離を調整したうえで車いすを固定フレームへ設置します。
選手は剣を持っていない方の手で車いすのハンドルなどを握り、上半身を大きく動かしながら攻防します。
車いすやクッションなどの細かな規定は変更される可能性があるため、詳しい寸法や用具条件は最新の公式規則で確認する必要があります。
競技の基本は、パラフェンシングのルールと一般のフェンシングとの違いで解説しています。
競技内に車いすクラスがある競技
パラ卓球
パラ卓球には、車いすを使用するクラス、立位で競技するクラス、知的障害のある選手のクラスがあります。
車いすクラスは1~5で、数字が小さいほど体幹や上肢などの機能への影響が大きいクラスです。
車いす同士の対戦では、サーブがネットを越えたあとに相手コートのサイドラインを横切る場合など、一定の条件でレットとなり、サーブをやり直します。
卓球で使う車いす
競技用として調整された車いすを使用する選手もいれば、日常生活で使っている車いすを競技に合わせて調整する選手もいます。
車いすの構造や背もたれの高さなどは、選手のクラスや姿勢、プレースタイルによって異なります。
パラアーチェリー
パラアーチェリーでは、車いす、スツール、立位など、選手のクラスや身体状況に応じた姿勢で弓を射ます。
そのため、パラアーチェリーに出場するすべての選手が車いすを使用するわけではありません。
上肢に障害のある選手は、口や補助具を使って弦を引くなど、自分の身体機能に合わせた方法で競技します。
アーチェリーで使う車いす
車いすを使用する選手にとっては、射るときの姿勢を安定させる土台になります。
ただし、使用する車いすや背もたれ、身体を支える方法は、競技区分や選手の身体状況によって異なります。
パラ陸上
パラ陸上には、トラック競技、跳躍競技、投てき競技など、さまざまな種目があります。
このうち車いすレースでは、レーサーと呼ばれる3輪の競技用車いすを使用します。
車いすレースの主なクラスはT32~T34、T51~T54です。
投てき種目では、通常の車いすではなく、選手の身体を支える投てき用フレームを使用する場合があります。
パラ陸上全体を「3輪のレーサーを使用する車いす競技」とまとめることはできません。種目やクラスによって、使用する用具と競技方法が異なります。
パラバドミントン
パラバドミントンには、車いすを使用するWH1・WH2のほか、立位や低身長の選手のクラスがあります。
車いすクラスのシングルスでは、通常のバドミントンコートより狭い範囲を使用します。
車いすを操作しながらシャトルを追い、素早く向きを変えて打ち返す技術が見どころです。
バドミントン用車いすの特徴
選手は旋回しやすさや身体の安定性を考えて調整した車いすを使用します。
後方へ身体を反らせて打つ場面もあるため、転倒防止キャスターを備えた車いすが使われます。
冬季パラリンピックには車いすカーリングがある
冬季パラリンピックには、車いすカーリングがあります。
選手は車いすに座った状態で、デリバリースティックなどを使ってストーンを投げます。
一般のカーリングとは異なり、ストーンの進路をブラシで掃くスウィーピングは行いません。
この記事では夏季競技を中心に紹介していますが、パラリンピック全体で車いす競技を考える場合は、冬季の車いすカーリングも含まれます。
競技用車いすは種目によって形が違う
スポーツで使用する車いすは、すべてが同じ形をしているわけではありません。
| 求められる動き | 競技例 | 車いす・用具の特徴 |
|---|---|---|
| 素早い旋回 | バスケットボール・テニス | 大きな車輪を外側へ傾ける |
| 接触への対応 | 車いすラグビー | 役割別のバンパーを備える |
| 直線でのスピード | 車いすレース | 3輪のレーサーを使用 |
| 姿勢の安定 | ボッチャ・アーチェリー | 選手の身体状況に合わせて調整 |
| その場での上半身操作 | パラフェンシング | 車いすを固定フレームへ設置 |
競技用車いすのフレームや座面、背もたれ、車輪の角度などは、競技の特徴や選手の身体状況に合わせて調整されます。
ただし、すべての競技用車いすが完全なオーダーメイドであるとは限らず、使用される素材や調整方法も製品によって異なります。
競技用車いすを試してみたい場合は、地域の障害者スポーツセンター、競技団体、体験会などへ問い合わせる方法があります。購入価格や貸し出しの有無は、競技や施設、製品によって異なります。
まとめ
パラリンピックで車いすを使う競技には、車いすバスケットボール、車いすラグビー、車いすテニスのような専用競技だけでなく、車いすクラスがあるパラ卓球、パラ陸上、パラバドミントンなどもあります。
そのため、車いす競技の数は、競技名だけを数えるのか、車いすクラスがある競技まで含めるのかによって変わります。
また、使用する車いすや用具も競技によって異なり、スピード、旋回、接触への強さ、姿勢の安定など、競技に必要な動きに合わせて工夫されています。
パラスポーツを観戦するときは、競技のルールだけでなく、選手が使用する車いすの形や役割にも注目してみましょう。


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