車いすテニスには、Open(オープン)とQuad(クアード)というスポーツクラスがあります。
クアードは、下肢だけでなく上肢の機能もテニスの競技動作に影響する選手が対象となるクラスです。
試合では手動車いすを使用する選手だけでなく、条件を満たした場合には電動車いすでプレーすることが認められる選手もいます。
また、手指の機能に応じてラケットを手に固定したり、通常とは異なる方法でサーブを行ったりすることがあります。
この記事では、車いすテニスのクアードとはどのようなクラスなのか、Openとの違い、クラス分け、ラケットやサーブのルール、電動車いすを使用できる条件について解説します。
車いすテニスのクアードとは?
車いすテニスのクアードは、下肢だけでなく、上肢にもテニスの競技動作へ影響する障害がある選手のスポーツクラスです。
車いすテニスには、主にOpen DivisionとQuad Divisionの2つのスポーツクラスがあります。
| スポーツクラス | 概要 |
|---|---|
| Open Division | 主に下肢に、車いすテニスの競技動作へ影響する障害がある選手 |
| Quad Division | 下肢に加えて、上肢にも競技動作へ影響する障害がある選手 |
ただし、「障害が重ければクアードになる」という単純な分け方ではありません。
国際大会ではITFのクラス分けによって、障害が車いすテニスの基本的な競技動作へどのように影響するかを評価し、スポーツクラスが決められます。
OpenとQuadは、診断名だけで決まるものではありません。
ITFのクラス分けでは、選手の障害と、車いすの操作やラケットの使用など競技に必要な動作への影響を評価します。
クアードはどんな障害の選手が対象?
クアードでは、下肢だけでなく上肢にも機能的な影響があり、車いすの操作やラケットの保持などに影響する選手が競技しています。
たとえば、手や腕の機能に影響があると、車いすをこぎながらラケットを保持したり、サーブのためにボールをトスしたりする動作が難しくなることがあります。
そのため、クラス分けでは病名だけを見るのではなく、障害が車いすテニスの競技動作へ及ぼす影響が評価されます。
2026年もITFのクラス分け制度は継続しており、ITFトーナメントへ出場する選手には、規定に沿ったクラス分けが求められます。
クアードの「Quad」は、四肢への機能的な影響を背景に使われてきた名称ですが、「四肢に障害がある」という言葉だけで競技クラスを判断することはできません。実際のクラス分けはITFの基準に沿って行われます。
クアードではラケットを手に固定してもいい?
クアードの選手の中には、握力や手指の機能の影響によって、ラケットをそのまま握り続けることが難しい選手もいます。
その場合、ラケットを手に固定するなど、選手の身体機能に合わせた方法が使われることがあります。
試合を見ると、テープなどを使ってラケットと手を固定している選手がいるのはそのためです。
これは単にラケットを持ちやすくするための工夫というだけではなく、選手が自身の身体機能に合わせて競技を行うための方法のひとつです。
国際大会で使用する補助的な用具については、ITFのクラス分けや競技規則に基づいて扱われます。選手が自由に好きな補助具を追加できるという意味ではありません。
クアードのサーブには特別なルールがある
車いすテニスでも、基本的には一般のテニスと同じようにサーブからポイントが始まります。
しかし、クアードの選手の中には、上肢の機能の影響によって、通常の方法でボールをトスすることが難しい場合があります。
そのような場合には、本人または第三者がボールを地面へ落とし、バウンドしたボールをサーブとして打つ方法が認められています。
第三者がボールを落とす場合、その人が選手に有利になるよう、ボールの位置や落とし方を意図的に変えることはできません。
クアードだから必ずこの方法でサーブするわけではありません。通常の方法でサーブを行う選手もいます。身体機能に応じて認められた方法を使用します。
クアードでは電動車いすでテニスができる?
クアードの選手の中には、条件を満たした場合に電動車いすを使用して車いすテニスを行う選手もいます。
日本車いすテニス協会では、手動車いすの操作が困難で、日常生活において電動車いすを使用しているクアード選手について、電動車いすでのプレーが認められると説明しています。
ただし、クアードの選手なら誰でも自由に電動車いすを選べるということではありません。
ITFの国際大会では、クラス分けパネルによって電動車いすの使用が認められ、その許可が選手のクラス分け記録に示されている必要があります。
競技で使用する電動車いすにもルールがある
ITFの2026年競技規則では、認められた選手が使用する電動車いすについても条件が定められています。
- 電動モーターによって動く車いすであること
- 最高速度がどの方向でも15km/hを超えないこと
- 選手本人が操作すること
- ITFのクラス分け規則に基づき使用を認められていること
そのため、普段使用している電動車いすであれば、そのままどのITF大会でも競技に使えるというわけではありません。
電動車いすを使用できるかどうかは、選手の希望だけでは決まりません。国際大会では、ITFのクラス分けと競技規則に基づいて判断されます。
電動車いすならパラリンピックにも出場できる?
ここは、ITFの通常の車いすテニス大会とパラリンピックを分けて考える必要があります。
ITFの2026年クラス分け規則では、条件を満たした選手に対して電動車いすの使用を認める仕組みがあります。
一方、この電動車いすの使用許可は、パラリンピックとIPC地域大会については対象外とされています。
そのため、「ITF大会で電動車いすを使える選手=パラリンピックでも同じように電動車いすを使用できる」と考えることはできません。
大会によって適用される規則や出場条件が異なります。実際に競技へ出場する場合は、その大会に適用される最新の規則を確認してください。
クアードは男女混合で行われる
Open Divisionでは、男子と女子がそれぞれ別のカテゴリーで競技します。
一方、Quad Divisionは男女混合で行われます。
そのため、車いすテニスを「男子・女子・クアード」と紹介している場合がありますが、これはOpen Divisionが男子と女子に分かれて競技し、Quad Divisionは男女混合で行われるためです。
クアードにもシングルスとダブルスがあります。
車いすテニスの基本ルールも知っておこう
クアードでも、車いすテニスの基本となる2バウンドルールなどは共通しています。
車いすテニスと一般テニスの違い、2バウンドルール、車いすにボールが当たった場合の扱い、サーブや足の使用などについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶ 車いすテニスと一般テニスの違い|2バウンドルール・反則・クアードを解説
クアードの日本人選手を知りたい場合
日本でもクアードの選手が国内外の大会で活動しています。
過去には菅野浩二選手や諸石光照選手がパラリンピックでメダルを獲得するなど、日本人選手も国際大会で実績を残しています。
男子・女子・クアードで活躍する日本人選手や、世界ランキング、主要大会については、こちらの記事で紹介しています。
▶ 車いすテニスの日本人選手|競技人口・世界ランキング・主要大会を解説
車いすテニスを始めてみたい場合
車いすテニスに興味を持っても、最初から競技用車いすを購入する必要はありません。
体験会や地域の活動団体で競技用車いすを借りられる場合があり、日本車いすテニス協会では競技用車いすのリースも行っています。
競技用車いすの価格、リース、体験会や地域の活動団体の探し方については、こちらの記事でまとめています。
▶ 車いすテニスの始め方|競技用車いすの価格・リース・体験会を解説
まとめ
車いすテニスのクアードは、下肢だけでなく上肢の機能も競技動作に影響する選手のスポーツクラスです。
診断名や障害の重さだけで決まるのではなく、ITFのクラス分けによって、障害が車いすテニスの競技動作へどのように影響するかが評価されます。
クアードでは、身体機能に応じてラケットを手に固定したり、通常とは異なる方法でサーブを行ったりする選手もいます。
また、条件を満たしてITFの許可を受けた選手は、対象となる大会で電動車いすを使用できる場合があります。
同じクアードでも、車いすの操作方法やラケットの持ち方、サーブなどは選手によって異なります。試合を見るときは、それぞれの選手が身体機能に合わせてどのようにプレーしているかにも注目してみてください。

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