車いすテニスと一般のテニスの大きな違いは、ボールが2回バウンドするまでに返球できることです。
ただし、違いは2バウンドルールだけではありません。
車いすが選手の身体の一部として扱われることや、打球時の姿勢、サーブ前の車いす操作、足の使用など、車いすテニス独自のルールがあります。
一方、コートの大きさ、ネットの高さ、ラケット、ボール、15・30・40と数える得点方式は、一般のテニスと基本的に同じです。
この記事では、ITFの車いすテニス規則と日本車いすテニス協会(JWTA)の公式情報をもとに、車いすテニスと一般テニスの違いを比較しながら、2バウンドルールや主な反則、サーブ、OpenとQuadのクラス分けについて解説します。
パラリンピックで車いすを使うほかの競技については、パラリンピックの車いす競技一覧で紹介しています。
車いすテニスと一般テニスの違い
車いすテニスと一般テニスの主な違いを、最初に比較してみましょう。
| 比較項目 | 車いすテニス | 一般テニス |
|---|---|---|
| バウンド数 | 2バウンドまで返球可能 | 1バウンドまでに返球 |
| 2バウンド目 | コートの外側でもよい | 2バウンドすると失点 |
| 移動方法 | 車いすを操作して移動 | 足でコート上を移動 |
| コート | 一般テニスと同じ | 通常のテニスコート |
| ネット | 一般テニスと同じ高さ | 通常の高さ |
| ラケット・ボール | 一般テニスと同じ | 通常のラケット・ボール |
| 得点方式 | 15・30・40、ゲーム、セットは基本的に同じ | 15・30・40、ゲーム、セットで進行 |
| 特有のルール | 車いす・座面・足の使用などに規定がある | 車いすに関する規定はない |
観戦するときに最も分かりやすい違いは2バウンドですが、選手にとっては、車いすを素早く操作して打球位置へ入るチェアワークも重要です。
一般テニスのフットワークにあたる動きを、車いすの加速、減速、旋回によって行います。
車いすテニスは2バウンドまで返球できる
車いすテニスでは、相手が打ったボールを、地面に2回バウンドするまでに返球できます。
1バウンド目はコート内に落ちる必要がありますが、2バウンド目はコートの外側に落ちても返球できます。
2バウンドルールのポイント
1バウンド目はコート内に入る必要がある
2バウンド目はコート外でもよい
3回目のバウンドまでに返球できなければ失点
ただし、必ず2バウンドさせる必要はありません。
選手はボールの速さや位置に応じて、ノーバウンドや1バウンドで返球することもあります。
早いタイミングで返すのか、2バウンド目まで使って体勢を整えるのかという判断も、車いすテニスの見どころです。
また、車いす選手と立位の選手が一緒にプレーする場合は、車いす選手には2バウンド、立位の選手には1バウンドのルールが適用されます。
コート・ネット・用具・得点方式は一般テニスと同じ
車いすテニスでは、一般テニスと同じ大きさのコートを使用します。
ネットの高さも同じで、ラケットやボールについても、車いすテニス専用のものを使うわけではありません。
得点方式も基本的に一般テニスと同じです。ポイントは15・30・40と数え、ゲームを重ねてセットを取ります。
ただし、大会によって試合形式が異なる場合があるため、実際の大会では大会要項を確認しましょう。

競技用車いすの特徴
競技に合わせて大きく異なる用具は、選手が乗る競技用車いすです。
テニス用車いすは、素早い加速や方向転換をしやすいように工夫されています。
大きな車輪は上から見ると「ハの字」に傾いているものが多く、横方向の安定性を高めながら旋回しやすい形になっています。後方には、打球時や急な動きで後ろへ倒れるのを防ぐためのキャスターが付いているものがあります。
車輪の角度やキャスターの数、座面の形などは、製品や選手の身体状況によって異なります。すべての競技用車いすが同じ形をしているわけではありません。
競技用車いすの価格や購入・リース、体験方法については、車いすテニスの始め方|競技用車いすの価格・リース・体験会で詳しく紹介しています。
チェアワークは旋回・加速・戻りにも注目
車いすテニスでは、ラケットを持ちながら車輪を操作し、ボールへ近づいて打ち、次の打球に備える位置へ戻ります。
観戦するときは、打球方向へ向きを変える旋回、短い距離での加速、打球後の素早い戻りにも注目してみてください。
相手の構えや打球コースを予測し、ボールが飛んでくる前から次の位置へ動き始める判断も、車いすテニスならではの見どころです。
車いすテニスで反則となる主なプレー
車いすテニスでは、車いすも選手の身体の一部として扱われます。
そのため、一般テニスにはない、車いすや打球時の姿勢に関するルールがあります。
ボールが返球前に身体や車いすへ当たる
インプレー中のボールが、ラケットで返球される前に選手の身体や車いすへ触れた場合は失点になります。
車いすは選手の身体の一部として扱われるため、車輪やフレームなどにボールが当たった場合も同様です。
これはノーバウンドの場合だけではありません。バウンドした後でも、返球する前のインプレー中のボールが身体や車いすへ当たればポイントを失います。
打球時に臀部が座面から離れる
選手がボールを打つときは、少なくとも臀部の片側が車いすの座面に接していなければなりません。
高いボールへ届こうとして、打球時に臀部が完全に座面から離れると失点になります。
足・下肢を使って打球・旋回・停止する
原則として、ボールがインプレーの間に、打球や旋回、停止のために足や下肢を地面または車輪へ当てて使うことは認められていません。
ただし、身体機能上、手で車輪を操作して車いすを進められない選手には、規則で定められた条件のもと、片足を使って車いすを進めることが認められる場合があります。
足の使用には身体機能に応じた例外がありますが、スイングの前方動作中から打球までや、サーブ動作の開始から打球までなど、足を地面につけることが認められない場面があります。
車いすテニスのサーブルール
車いすテニスでも、サーブはベースラインの後方から行います。
サーブを始める直前には車いすを静止させ、その後、ボールを打つ前に車いすを1回プッシュすることが認められています。
サーブの動作中は、車輪がベースラインやセンターマーク、サイドラインの仮想延長線によって定められた範囲から外れないようにする必要があります。
身体機能によって通常の方法でサーブを行うことが難しいQuad選手には、本人または第三者がボールを落とし、バウンドした後に打つ方法が認められる場合があります。その場合は、試合を通して同じ方法でサーブします。
車いすテニスのクラス分けはOpenとQuad
車いすテニスでは、選手の身体機能が競技へ及ぼす影響に応じて、主にOpen DivisionとQuad Divisionに分けられます。
| クラス | 概要 |
|---|---|
| Open Division | 主に下肢に、競技へ影響する障害がある選手 |
| Quad Division | 下肢に加えて、上肢にも競技へ影響する障害がある選手 |
男子、女子、ジュニアは大会のカテゴリーや年齢区分であり、障害の程度を表すスポーツクラスとは異なります。
Quadでは、上肢の機能も競技に影響するため、ラケットを手に固定したり、条件を満たす選手が電動車いすを使用したりする場合があります。
Quadの対象となる選手やOpenとの違い、ラケットの保持、サーブ、電動車いすの使用などについては、車いすテニスのクアードとは?電動車いす・障害・ルールで詳しく紹介しています。
車いすテニスのよくある質問
車いすテニスは必ず2バウンドさせてから返しますか?
いいえ。2バウンドは「2回目まで待たなければならない」という意味ではありません。ノーバウンドや1バウンドで返球することもできます。
2バウンド目がコートの外でも返球できますか?
はい。1バウンド目が正しいコート内に入っていれば、2バウンド目はコートの内側でも外側でも返球できます。
車いすにボールが当たったら失点ですか?
返球する前のインプレー中のボールが車輪やフレームなどへ当たった場合は失点です。車いすは選手の身体の一部として扱われます。
コートやラケット、得点方式は一般テニスと同じですか?
基本的に同じです。コートの大きさ、ネットの高さ、ラケット、ボールは一般テニスと共通し、得点も15・30・40、ゲーム、セットで数えます。
障害のない立位の選手と一緒にプレーできますか?
はい。一緒にプレーできます。その場合は、車いす選手には2バウンド、立位の選手には1バウンドのルールをそれぞれ適用します。
まとめ
車いすテニスと一般テニスの最も分かりやすい違いは、車いすテニスでは2バウンドまでに返球できることです。
一方、コートの大きさ、ネットの高さ、ラケット、ボール、15・30・40と数える得点方式は、一般テニスと基本的に同じです。
そのほかにも、車いすが身体の一部として扱われることや、打球時の座面との接触、サーブ前の車いす操作、足の使用など、車いすテニス独自の規定があります。
競技を始める方法や競技用車いすについては、車いすテニスの始め方で紹介しています。
日本人選手や世界ランキング、主要大会については、車いすテニスの日本人選手・世界ランキング・主要大会をご覧ください。
OpenとQuadの違いや、クアードでのラケット保持・電動車いすなどについては、車いすテニスのクアードとは?で詳しく解説しています。
観戦するときは2バウンドルールだけでなく、選手が相手の打球を予測し、車いすを加速・旋回させ、打球後に次の位置へ戻るチェアワークにも注目してみましょう。


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