車いすテニスと一般のテニスの大きな違いは、ボールが2回バウンドするまでに返球できることです。
ただし、違いは2バウンドルールだけではありません。
車いすが選手の身体の一部として扱われることや、打球時の姿勢、サーブ前の車いす操作、足の使用など、車いすテニス独自のルールがあります。
一方、コートの大きさ、ネットの高さ、ラケット、ボールは、一般のテニスと基本的に同じです。
この記事では、車いすテニスと一般テニスの違いを比較しながら、2バウンドルール、主な反則、Openとクアードのクラス分けについて解説します。
パラリンピックで車いすを使うほかの競技については、パラリンピックの車いす競技一覧で紹介しています。
車いすテニスと一般テニスの違い
車いすテニスと一般テニスの主な違いを、最初に比較してみましょう。
| 比較項目 | 車いすテニス | 一般テニス |
|---|---|---|
| バウンド数 | 2バウンドまで返球可能 | 1バウンドまでに返球 |
| 2バウンド目 | コートの外側でもよい | 2バウンドすると失点 |
| 移動方法 | 車いすを操作して移動 | 足でコート上を移動 |
| コート | 一般テニスと同じ | 通常のテニスコート |
| ネット | 一般テニスと同じ高さ | 通常の高さ |
| ラケット・ボール | 一般テニスと同じ | 通常のラケット・ボール |
| 特有のルール | 車いす・座面・足の使用などに規定がある | 車いすに関する規定はない |
観戦するときに最も分かりやすい違いは2バウンドですが、選手にとっては、車いすを素早く操作して打球位置へ入るチェアワークも重要です。
一般テニスのフットワークにあたる動きを、車いすの加速、減速、旋回によって行います。
車いすテニスは2バウンドまで返球できる
車いすテニスでは、相手が打ったボールを、地面に2回バウンドするまでに返球できます。
1バウンド目はコート内に落ちる必要がありますが、2バウンド目はコートの外側に落ちても返球できます。
2バウンドルールのポイント
1バウンド目はコート内に入る必要がある
2バウンド目はコート外でもよい
3回目のバウンドまでに返球できなければ失点
ただし、必ず2バウンドさせる必要はありません。
選手はボールの速さや位置に応じて、ノーバウンドや1バウンドで返球することもあります。
また、車いす選手と立位の選手が一緒にプレーする場合は、車いす選手には2バウンド、立位選手には1バウンドのルールが適用されます。
コート・ネット・ラケット・ボールは同じ
車いすテニスでは、一般テニスと同じ大きさのコートを使用します。
ネットの高さも同じで、ラケットやボールについても、車いすテニス専用のものを使うわけではありません。

競技に合わせて大きく異なる用具は、選手が乗る競技用車いすです。
テニス用車いすは、左右へ素早く方向転換しやすいように大きな車輪が外側へ傾けられ、後方には転倒を防ぐための小さなキャスターが付いています。
車輪の角度やキャスターの数、座面の形などは、製品や選手の身体状況によって異なります。すべての競技用車いすが同じ形をしているわけではありません。
車いすテニスで反則となる主なプレー
車いすテニスでは、車いすも選手の身体の一部として扱われます。
そのため、一般テニスにはない、車いすや打球時の姿勢に関するルールがあります。
車いすにボールが当たる
プレー中のボールが選手の車いすに当たった場合は、身体にボールが当たった場合と同様に扱われ、ボールが当たった側の失点になります。
ラケットで正しく返球する前に、車輪やフレームへボールが当たらないようにする必要があります。
打球時に臀部が座面から離れる
選手がボールを打つときは、少なくとも臀部の片側が車いすの座面に接していなければなりません。
高いボールへ届こうとして、打球時に臀部が完全に座面から離れると反則になります。
足を不適切に使用する
原則として、打球時に足を地面へつけたり、足を使って身体や車いすを支えたりすることは認められていません。
ただし、身体機能上、手で車輪を操作できないと認められた選手は、片足を使って車いすを進められる場合があります。
身体機能上の理由から、片足で地面を蹴って車いすを進めることが認められている選手もいます。ただし、ボールを打つ動作中やサーブ動作を始めたあとは、足を地面につけて身体や車いすを支えることはできません。
車いすテニスのサーブルール
車いすテニスでも、サーブはベースラインの後方から打ちます。
サーブを始める前には、車いすを静止させなければなりません。
静止したあと、サーブを打つ前に車いすを1回プッシュすることが認められています。
ただし、サーブの動作中に車輪がベースラインやセンターマークの想定延長線など、規定された範囲へ触れるとフォールトになります。
クアード選手に認められるドロップサーブ
障害の影響により通常の方法でボールをトスすることが難しいクアード選手は、本人または第三者がボールを地面へ落とし、バウンドしたボールをサーブとして打つことができます。
この方法を選択した場合は、原則として試合中を通して同じ方法でサーブを行います。
車いすテニスのクラス分けはOpenとQuad
車いすテニスのスポーツクラスは、主に次の2つです。
| クラス | 対象となる選手 |
|---|---|
| Open Division | 主に下肢に、競技へ影響する障害がある選手 |
| Quad Division | 下肢に加えて、上肢にも競技へ影響する障害がある選手 |
男子、女子、ジュニアは大会のカテゴリーや年齢区分であり、障害の程度を表すスポーツクラスとは異なります。
そのため、「男子・女子・クアード・ジュニアの4クラス」と分けるのは正確ではありません。
クアードとは
クアードは、下肢だけでなく、上肢にもテニスの競技動作へ影響する障害がある選手の区分です。
一般的には、少なくとも3つの手足に機能的な影響がある選手が対象になります。
診断名だけで決まるものではなく、車いすの操作、ラケットの保持、サーブなど、競技動作への影響を確認して分類されます。
握力や手指の機能を補うため、ラケットと手をテープなどで固定してプレーする選手もいます。
Openは男子と女子に分かれて行われますが、クアードは男女混合で競技が行われます。
電動車いすを使える場合もある
身体機能の影響により手動車いすの操作が難しい選手は、条件を満たした場合に電動車いすを使用できることがあります。
ただし、希望すれば誰でも電動車いすを使えるわけではありません。
ITFの大会では、分類を担当するパネルによって認められ、対象選手として登録されていることなどの条件があります。
電動車いすの使用が認められる大会や条件には違いがあります。パラリンピックや一部の国際大会では使用できないため、大会ごとの最新規則を確認する必要があります。
クアード選手への大会運営上の配慮
クアード選手の中には、障害の影響によって体温調節が難しい選手もいます。
そのため大会の運営要件では、クアード選手が待機する場所の日陰や、身体を冷やすための氷を用意するなどの配慮が定められています。
これは車いすテニスの得点や反則に関する競技ルールではなく、大会を安全に運営するための準備です。
まとめ
車いすテニスと一般テニスの最も分かりやすい違いは、車いすテニスでは2バウンドまでに返球できることです。
一方、コートの大きさ、ネットの高さ、ラケット、ボールは、一般テニスと基本的に同じです。
そのほかにも、車いすが身体の一部として扱われることや、打球時の座面との接触、サーブ前の車いす操作、足の使用など、車いすテニス独自の規定があります。
クラス分けは、男子・女子・ジュニアを含めた4分類ではなく、スポーツクラスとしてはOpenとQuadに分けられます。
観戦するときは2バウンドルールだけでなく、選手が車いすを加速・旋回させながら打球位置へ入るチェアワークにも注目してみましょう。


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