「家族の中に一台車椅子があれば、外出が少し楽になるかもしれない」。
親や配偶者、兄弟姉妹など、普段は歩けても長い距離になると疲れやすい家族がいると、そんなふうに感じることがあります。
「病院や買い物では車椅子があれば楽そう。でも介護認定を受けるほどではない」。
そんなとき、自費で購入できる車椅子を探すと、比較的手頃な価格のものもたくさん見つかります。
一方で、「安い車椅子でも大丈夫?」「安全に使える?」「どれを選べばいい?」と不安になる人もいるでしょう。
一般に販売されている車椅子を自費で購入するために、要介護認定や障害者手帳が必要なわけではありません。
大切なのは、単に最安値を探すのではなく、「早い・安い・安全」の3つを考えて、使う人と生活に合う一台を選ぶことです。
この記事では、安い車椅子を自費購入するときの考え方や確認ポイント、まだ歩ける人の外出用として使う方法、軽量・コンパクトな車椅子の選び方まで解説します。
車椅子は安いものでも大丈夫?
車椅子は、価格が高いものが性能が良く、安いものは性能が悪いというものではありません。
大切なのは、使う人の身体や用途に必要な機能が備わっているかどうかです。
たとえば、家族が押して買い物や通院などの外出時だけ使う場合と、一日を通して長時間座り続ける場合では、必要な車椅子の機能は大きく変わります。
短時間の外出が中心なら、必要な機能を絞ったシンプルな車椅子が合うこともあります。
一方で、姿勢を保つための細かな調整が必要だったり、リクライニングやティルトなどの機能が必要だったりする場合は、価格だけで選ばない方がよいでしょう。
「安い車椅子=おすすめ」ではありません。
用途に必要な機能を備えた車椅子が、結果として手頃な価格だった、という選び方が理想です。
介護保険や障害者手帳がなくても車椅子は自費購入できる
「車椅子は介護保険や障害者向けの制度を利用して用意するもの」と思っている人もいるかもしれません。
しかし、市販されている車椅子は、介護認定や障害者手帳がなくても自費で購入できます。
介護保険では車椅子は原則レンタル
介護保険では、車椅子は原則として福祉用具貸与(レンタル)の対象です。
対象となる人は、自己負担割合に応じた利用料を支払いながらレンタルする方法があります。
必要な車椅子を専門職と相談しながら選べたり、身体状況の変化に合わせて変更しやすかったりするのは大きなメリットです。
一方で、介護認定を受けていない人や、保険給付の対象にならない人もいます。
また、「旅行や買い物のときだけ使いたい」「家族用に一台持っておきたい」など、レンタルではなく購入した方が使いやすいケースもあります。
介護保険で車椅子を借りる場合については、車椅子をレンタルするときの選び方で詳しく解説しています。
障害者向けには補装具費支給制度がある
身体の状態など一定の要件を満たす場合は、補装具費支給制度によって車椅子の購入等に必要な費用の支給を受けられる場合があります。
ただし、申請すればその場で車椅子を受け取れる制度ではありません。
申請後に市町村や身体障害者更生相談所などによる確認や判定等があり、支給決定後に補装具業者と購入等の手続きを進めます。
身体に合わせて車椅子を作ったり、必要な機能を追加したりできる大切な制度ですが、「今すぐ外出用の車椅子が欲しい」という目的とは時間軸が異なる場合があります。
障害者手帳を使って車椅子を購入する場合の流れや、補装具費支給制度については、障害者手帳で車椅子を購入するときの制度と手続きで詳しく解説しています。
制度を利用するか自費購入するかは目的で考える
制度を利用できる人が、自費購入の方がよいとは限りません。
身体に合った調整や専門的な支援が必要なら、利用できる制度について自治体や専門職へ相談する価値があります。
その一方で、介護認定を受けていない人の外出用や、必要なときだけ使う家族用の車椅子などでは、自費購入が選択肢になることがあります。
安い車椅子を選ぶなら「早い・安い・安全」で考える
自費で車椅子を購入するとき、私が大切だと思うのは「早い・安い・安全」の3つです。
| 早い | 必要なときに用意しやすく、使いたい場面ですぐ使える |
|---|---|
| 安い | 無理のない価格で購入でき、実際の生活でも使いやすい |
| 安全 | 身体や用途に合うサイズ・耐荷重・ブレーキなどを確認する |
「早い・安い・安全」といっても、それぞれ意味する内容は少しずつ違います。ここから順番に見ていきましょう。
「早い」は届くまでの早さだけではない
自費購入なら、制度上の支給決定を待つ必要がなく、自分のタイミングで商品を選んで購入できます。
でも、今回考えたい「早い」はそれだけではありません。
軽量で小さく折りたためる車椅子なら、車へ積んだり、外出先へ持ち運んだりしやすくなります。
そして本人が疲れて歩けなくなったとき、すぐに車椅子へ切り替えられます。
必要なときにすぐ使える車椅子があることは、「行きたいときに行ける」「会いたい人に会いに行ける」という選択肢を残すことにもつながります。
「安い」は価格のことだけではない
この記事でいう「安い」は、単に価格が低いという意味だけではありません。
安価であることに加えて、使いやすい、持ち運びやすい、準備しやすい。そんな「○○しやすい」の“やすい”も大切だと考えています。
せっかく手頃な価格で購入できても、重くて持ち出せない、折りたたみにくい、必要なときにすぐ使えないのでは、本人にも家族にも使いやすい車椅子とはいえません。
価格だけでなく、「実際に使い続けやすいか」まで含めて選ぶことが、自費購入では大切です。
「安全」は購入後ではなく購入前に確認する
車椅子は人が乗って移動する道具です。
ブレーキがあるから大丈夫、タイヤが付いているから大丈夫、というだけではありません。
利用者の体重が耐荷重以内か、身体に合う座幅か、介助する人が無理なく扱える重量かなどを購入前に確認することが重要です。
まだ歩ける人にも車椅子があると外出しやすくなる
車椅子は「まったく歩けなくなってから使うもの」とは限りません。
家の中や短い距離なら歩けても、大きな商業施設や病院、観光地などを長時間歩くのは難しい人もいます。
最初は一緒に歩いていても、途中で疲れてしまえば「今日はもう帰ろうか」となることがあります。
家族は気にしていなくても、本人は「私がいるから早く帰ることになった」「一緒に来ると気を遣わせる」と感じることがあります。
そして、「それなら次は留守番しておこう」と考えるようになれば、外出する機会そのものが少なくなってしまうこともあります。
家族側も、毎回途中で帰ることになれば、「一緒に行くと自分の見たいものまで見られない」と感じるかもしれません。

歩けるところは自分で歩く。疲れたら車椅子を使う。それだけで、「歩けなくなるかもしれないから行かない」ではなく、「疲れたら車椅子を使えばいい」に変えられます。

特に、小さく折りたたんで持ち運べる車椅子なら、本人が歩いている間は家族が持ち、必要になったときに広げて使うことができます。
車椅子を持って出かけることは、「ずっと車椅子に乗る」という意味ではありません。
必要になったときに使える選択肢を一緒に持って出かける。
そんな考え方もあっていいのではないでしょうか。
自費購入で失敗しない車椅子の選び方|おすすめの確認ポイント
安い車椅子を自費購入するときは、価格を見る前に「誰が、どこで、どのように使うのか」を決めておくと選びやすくなります。
自走式か介助式か
本人がハンドリムを操作して移動するなら自走式、家族などが後ろから押すことが中心なら介助式が候補になります。
自走式は本人が自分で移動できる一方、後輪が大きくなるため、車椅子全体の幅や持ち運びやすさにも違いがあります。
自走式車椅子については、自走式車椅子とは?特徴と選び方で詳しく解説しています。
外出時だけ家族が押して使う場合は、軽量で持ち運びやすい介助式の方が扱いやすいケースもあります。
座幅と座面サイズが身体に合うか
安い車椅子でも、身体に合わなければ使いやすい車椅子にはなりません。
座幅が狭すぎれば身体を圧迫し、広すぎれば姿勢が崩れやすくなる場合があります。
座幅や座面の奥行き、高さについては、車椅子のサイズの選び方|座幅の測り方・目安と身体に合うサイズの確認ポイントで詳しく解説しています。
耐荷重を確認する
商品ページには、その車椅子で使用できる体重の目安として耐荷重が表示されています。
座れる大きさに見えても、利用者の体重が製品の耐荷重を超えている場合は選べません。
車椅子本体の重量を確認する
車へ積み込んだり、階段などで車椅子だけを持ち上げたりする場合は、本体重量が大きな違いになります。

車へ載せる場合は、車椅子をトランクや荷室まで持ち上げることが多くなります。車種によっては荷室の位置が高く、腰の高さから持ち上げるだけでなく、胸や肩に近い高さまで持ち上げる動作になることもあります。
同じ重量でも、床から少し持ち上げるのと、車の荷室まで持ち上げるのでは負担が変わります。
重量の数字だけではイメージしにくい場合は、家にある空気清浄機や掃除機など、近い重さのものを安全に持てる範囲で持ってみると、重さの感覚をつかみやすくなります。
重さが分からない場合は、無理なく持てる大きさの家電などを持った状態で体重計に乗り、自分だけの体重との差からおおよその重量を確認する方法もあります。
ただし、同じ重さでも車椅子と家電では形、持ち手、重心が違うため、実際の持ち上げやすさは同じではありません。あくまで重量感をイメージする目安として考えてください。
折りたたんだときの大きさを確認する
「折りたたみ式」と書かれていても、折りたたみ方や小さくなる方向は製品によって異なります。
一般的な車椅子は左右のフレームが中央へ寄り、全幅が狭くなるタイプも多くあります。
一方で、外出時の持ち運びを重視した車椅子には、さらにコンパクトな形まで折りたためるものもあります。
車へ載せる場合は、折りたたみ後の幅だけでなく、高さや長さも確認しましょう。

玄関や収納場所、車の荷室にその大きさを当ててみると、「本当にここへ置けるか」「出し入れできるか」を確認しやすくなります。
私も自宅へリフトを取り入れようとしたとき、寸法だけでは大きさがイメージしにくかったため、新聞紙をつなぎ合わせて実際のサイズを作りました。
数字だけを見るよりも、「このくらいの場所を取るんだ」と生活する場所に置き換えて確認できたので、大きさを判断しやすくなりました。
自宅での置き場所や、廊下・ドアを通れるかについては、家で車椅子を使うときの廊下幅と室内動線も参考にしてください。
ブレーキとタイヤを確認する
介助者が押す場合は、手元で操作できる介助ブレーキの有無も確認しておきたいポイントです。
駐車時に車椅子を固定するブレーキの位置や操作方法も商品によって異なります。
また、空気を入れるタイヤかノーパンクタイヤかなどによって、使用後の管理方法も変わります。
自宅・車・外出先で扱えるか
車椅子は身体に合っていても、生活する場所に合わなければ使いづらくなります。
自宅で使用するなら廊下やドア、曲がり角などの幅も確認してください。
軽くてコンパクトな車椅子は外出用におすすめ
本人が普段は歩けて、疲れたときだけ使うのであれば、軽量でコンパクトに折りたためる介助式車椅子は候補のひとつです。
介助式車椅子の特徴や選び方については、介助式車椅子とは?特徴と選び方も参考にしてください。
この使い方では、乗っている時間だけでなく、「誰かが車椅子を持っている時間」も長くなります。
そのため、座り心地だけでなく、家族が持ち運びやすいかも重要です。
Nice Way ONE PLUSのような持ち運び重視の車椅子もある
持ち運びやすい介助式車椅子の一例として、フェニックス商事の「Nice Way ONE PLUS」があります。
公式の商品仕様では、介助式で重量約7.7kg、座面幅約40cm、耐荷重約100kgです。
折りたたみ時の持ち運びに使えるキャリーハンドルが付いており、コンパクトに折りたためるのが特徴です。
ノーパンクタイヤや介助ブレーキも備えています。
本人が歩いている間は家族が車椅子を持ち運び、疲れたらその場で広げて使うという目的にも合わせやすいタイプです。
Nice Way ONE PLUSは介助式です。本人がハンドリムを使って自走する目的には向きません。座幅・耐荷重・本体サイズなども確認し、使う人に合うか判断してください。
購入を検討するときは、最新の寸法・仕様・在庫・納期などを商品ページで確認してください。
通販で安い車椅子を購入するときの注意点
車椅子を通販で購入すると、店舗へ行かなくても多くの商品を比較できます。
その一方で、実際に座らず購入することになるため、商品ページの確認は特に重要です。
価格だけを比較しない
本体価格だけでなく、送料や付属品、必要なオプションなども確認しましょう。
価格差だけを見て決めるのではなく、同じ条件の車椅子同士で比較することが大切です。
保証や問い合わせ先を確認する
使用中に部品の不具合や故障が起きる可能性もあります。
メーカー保証の有無、問い合わせ窓口、交換部品の取り扱いなども購入前に確認しておきましょう。
届いたら使用前に必ず確認する
車椅子が届いたら、説明書を確認してから使用します。
ブレーキやタイヤ、フットサポート、折りたたみ部分などに異常がないかを確認し、初めて乗るときは安全な場所で操作方法を確かめてください。
安い車椅子を自費購入するのが向かない場合もある
自費で購入できる手頃な車椅子は便利ですが、すべての人に向いているわけではありません。
毎日長時間使用する人、身体を自分で支えることが難しい人、姿勢保持のための細かな調整が必要な人などは、市販の車椅子を価格だけで選ばない方がよいでしょう。
ティルトやリクライニングなど特別な機能が必要な場合も、身体の状態によって適した車椅子が異なります。
ティルトとリクライニングの違いや、どのような場面で使われるかについては、ティルトとリクライニング車椅子の違い|デメリット・どんな人に使われる?で詳しく解説しています。
こうした場合は、医師や理学療法士・作業療法士、福祉用具専門相談員などに相談しながら選ぶ方法があります。
まとめ
安い車椅子を探すときに大切なのは、最も価格が低い商品を選ぶことではありません。
介護認定や障害者手帳がなくても、市販の車椅子を自費で購入することはできます。
特に、まだ歩くことはできても長距離の外出がつらい人や、家族との買い物・通院・旅行などで必要なときだけ車椅子を使いたい人にとって、自費購入は選択肢のひとつになります。
車椅子を選ぶときは、自走式か介助式か、身体に合うサイズ、耐荷重、本体重量、折りたたみサイズ、ブレーキ、使用する場所などを確認してください。
「早い・安い・安全」に用意できる車椅子があれば、「疲れて歩けなくなるかもしれないから出かけない」ではなく、「疲れたら車椅子を使えばいい」と考えられます。
車椅子は、外出を制限するためのものではなく、本人と家族が一緒に出かける選択肢を増やすためにも使えます。

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